どうして僕等はここに居るの?
逃げてきたから…
ここは僕等の居るところなの?
居場所が無いから…
僕等はあっちにはいけないの?
行けるけど…行けない…
…どうして?
誰も…自分たちを見てくれないから…
「ねぇ…ずっとここに居なきゃいけないの?僕あっちにいる、あの子の側に行ってみたいな…。」
少しまどろんでいた意識にぼんやりと聞こえる声。理由も分からずに、連れて来られたような子供。否、子供ではない。そして人でもない…。それは兵器、人型のVR。
「ねぇ!ライデン、聞いてる!?」
少し怒ったように、ここに連れて来たもう一人に噛みつく。
ライデン…白いライデン。試作機として作製され、あるDr.の手により自我を認識する。そしてそこから時が回りだした…。運命が牙を剥いたと言うべきか…または、進むべくして動きだしたモノなのか。どちらなのかは定かではない。
ただ一つ言える事は、自分たちの存在を認めて、喜んでくれた人が居た事。もう二度と会えない…。これからも、そんな人に逢う事が出来る確信はない。ずっと…逃げ続けなければ…。捕まれば…消される…。
「……私たちは追われている。戻ることは出来ない……。」
気だるそうな応答。試作機で出力が不安定な上に、CISへもう一機を連れてのコンバ−ト。いかに出力があっても安定していなければ反動もきつい。
「ここに来てからずーっとそればっかり!ここには何にも無いじゃない!ここに居る理由ってナニ?!何で僕たち逃げなきゃいけないの?!」
たまり兼ねたように叫ぶ。ここに来てからずっと同じ答えの繰り返し。
どうしていいか分からない、どうしたいのかも…。全てが白い…。
ライデンは僕の記憶が無い事を教えてくれた。だから、ここに来てからいろいろな事を少しずつ、分かるまで教えてもらった。白い織物が染め上げられるように…少しずつ…。それでも、ここに居る理由だけは教えてくれない。それだけは避けてるような感じがする。
「…答えが必要か?」
殆どのシステムを落としていた機体が動く。ゆっくりと…緩慢に…。そして歯切れが悪く、思い詰めたように語る。
「いずれ私たちのような機体も出てくるだろう…博士の様な人が居るならば問題はない…。しかし…私たちは時が早過ぎた。博士のような人は未だ居ない。一応博士の息子、私たちの兄に期待してはいる。だが…私たちを認めてくれる人は…今現在…居ない。」
「……よく…分からない…。僕たちは…居てはいけないの?」
聞いてはいけない事なのかと思い、急に不安になった。
「そうではない、ただ時期が早過ぎただけだ。」
そう言うとコンバートを開始した。光に包まれ機体が変換されていく。そしてその姿は小さく縮み始めた…
何故だろう…僕知ってるような気がする…前に見たような気が…
やがて光が収まると人が居た。否、人ではない。先ほどまでそこに存在していた機体、白いライデン。ゆっくりと眼を開く…それは金色の瞳。色白の肌と銀色の髪に鮮やかに映える。そのまま何も言わず、ただ相手をじっと見つめている。
「……それが答え…?」
「そうだ…お前にも出来る…ただ…忘れただけだ…」
苦しそうにその言葉を吐き出した。
『忘れた』
それは違う。消されたんだ。あいつに…あの自分の利益しか見ない男に。そして、大切な父である博士まで殺された。もう戻る場所はない。緩やかだったあの時間には帰れない。
ただあるのは、大切な弟たちを守る事。それだけが今この時間を残る術。
「ねぇ…どこか痛いの…?」
泣きだしそうに思い詰めたライデンに顔を近づけた。
「…何でもない。」
少し慌てたが、頭を振ってふわりと笑った。それから優しく触れる。
「テムジン…もう少し待ってくれ…もう少し。…私たちの事を兵器ではなく、ちゃんと私達自身を見てくれる人が現れるまで…それまで…」
「ねぇ…ライデンの顔のこれ何?」
言いながら自分の目の辺りから頬をなぞる仕種をする。言われて自らの頬に手を当て、それを見た。
暫くの間愕然として言葉も出ない。
それは人が流すもの。
兵器であり、機械であるモノには関係がない。
しかしながら心当たりはある。
生物に興味があった。
ソレに関するものは手当たり次第に詰め込んだ。
より近くなれるように…
「…涙……私は…泣けるのか…」
「なみだ?それってこの水みたいなモノ?」
そう言うと、細心の注意を払ってそろりとライデンの頬をつつく。つついた指先を、いろいろな角度から繁々と眺めながら小首を傾げる。
「うーん…よくわかんないや。」
機体の姿で行われるその仕種を見やりながら、クスリと笑みを浮かべた。そして諭すように言葉を繋げる。
「テムジン…お前の過去は無いけれど、これからの先はある。その先を消さない為にも、私たち自身を見てくれる人が必要だ。その人が現れるまで、どれだけの時間を待てばいいのかは判らない。だがこれだけは言える。私達自身を見てくれる人は、少なくとも私達を道具とは見ないだろう。」
「あ、それって兄弟ってやつでしょ?」
「…一寸…違うな…」
どこからそんな答えが出てくるのか、呆れて苦笑した。
「違うの?」
「そうだな…大事な事には代わりないが…仲間、パートナー位には見てくれる事は望むかな。」
「そっか…。じゃぁ早く僕たちを見つけてくれないかなぁ。ここに居るのにね。僕たちはここに居るんだよ、って教えてあげたいな。」
両手を広げて、何も無いその空間を抱くように仰ぎ見るその声は、軽やかに踊っている。まだ見ぬ自由な空を思い、馳せるように。
お父さん、貴方に逢えた事を感謝します。
私たちを認めてくれた事を感謝します。
弟たちを残してくれた事を感謝します。
お礼をする事はもう出来ないけれど、
貴方から貰った大切なモノは
必ず弟たちに伝えます。
それが、今の私に出来る精一杯の事だから…
そして時は紡がれる。
後に逢う少女が、その扉を開く為に…
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言い訳:文才無いのが目に見えて分かる素敵な書き下ろし。
元々絵描きやし〜。文体を変えようとした無駄な努力は見えるかしら…。
気を抜くと戻ってるから…。
どうもアイスドール物語になってそうでイヤな感じなんですが…いかがでしょう?